
「御影石はどのような特徴をもつ石材?」
「御影石はどういった用途で建築物に使われる?」
このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
御影石とは、墓石から建築物まで幅広い用途で使用される石材のひとつです。御影石は耐久性に優れており、主に外壁や玄関床、浴室などに使用されます。
しかし、御影石にはさまざまな種類があるため、扱う際にはそれぞれ気をつけるべき点が異なります。
本記事では、御影石の特徴や値段、扱う場合の注意点を解説します。御影石の特徴を知り、建築材に取り入れたいと考えている方は、ぜひご一読ください。
御影石とは耐久性に優れている岩石

御影石とは、深い地殻部分でマグマが冷却されて結晶化した岩石です。結晶後、地殻変動によって地表近くに持ち上げられたため、粒状の組織を有しています。岩石学では、”花崗岩(かこうがん)”と呼ばれています。
現在の石材業界では、花崗岩全般を”御影石”と呼んでおり、きっかけとなったのは兵庫県御影地区で産出した良質な花崗岩を”御影石”と称したことです。
御影石は耐久性に優れており、模様や色調が均質な点が特徴といえるでしょう。建築物では、外壁や玄関床などに使用される事例が多くあります。
御影石は何に使う?墓石から建築物まで用途は幅広い
御影石は、以下のように幅広い用途で使用されている石材です。
- 墓石
- 造園
- 舗装用石材
- 建築物
なお、御影石が使われている日本国内の代表的な建築物は、以下のとおりです。
- 国会議事堂
- 日本銀行本店
- 東京都庁
耐久性に優れている特徴を活かして、有名な建築物だけではなく、駅の舗道や路面電車の軌道などさまざまな場所に使われているため、身近な石材といえます。
御影石の値段
御影石の価格相場は、天然御影石(300角)の場合で1平米あたりの価格は、9,000円〜30,000円台です。以下の要素により、価格は大幅に変動します。
- 種類
- 用途
- 色調
- 産地
タイル専門店である「タイルライフ」の商品の中から、御影石の価格も見ていきましょう。仕上げ方法やサイズによっても値段が異なるため、具体例として挙げる商品は本磨き仕上げの300㎜角の商品に統一しています。
色調 | 石種 | 1平米あたりの価格(税抜) |
黒系 | ベルファーストブラック | 29,813円 |
白系 | ルナパール | 16,307円 |
グレー系 | 浪花白 | 12,340円 |
ベージュ系 | インペリアルゴールド | 17,430円 |
赤系 | ニューインペリアルレッド | 23,900円 |
※2025年3月17日時点
御影石はさまざまな要素により、価格に大きな幅がある点を押さえておきましょう。
大理石との違いは?加工のしやすさや用途が異なる
御影石とよく似ている石材に、大理石があります。両者の違いは加工のしやすさや用途です。
御影石は耐久性に優れているため、外壁や玄関床などの外装によく使用されます。一方、大理石は軟らかく加工しやすいため、内装に使用される事例が多いです。
そもそも大理石とは、石灰岩が地殻変動やマグマの熱による変成作用を受け、再結晶化した変成岩のひとつです。炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分としているため、御影石よりも風化しやすい石材といえます。
色調は石灰質の混入鉱物によって異なり、白やベージュ、灰、緑、茶、黒などさまざまです。独特な色合いや模様が特徴的で、内装の中でも特にエレガントな雰囲気に仕上げたい部位に使用されるケースが多くあります。
なお、酸性雨の影響も受けやすいため、屋外で使用すると、光沢のある本磨き仕上げは艶がなくなってしまうので注意が必要です。
【石種別】代表的な御影石の産地
御影石は日本だけでなく、さまざまな国で産出されている石材です。多様な石種があり、それぞれ色味や特徴が異なります。
分類ごとの主な石種や産地を以下の表にまとめました。
分類 | 石種 | 産地 |
白御影石 | ルナパール ビアンコカルディガン G603 | イタリア 中国 ブラジル |
桜御影石 | ピンクポリーノ ローザベータ G364 | スペイン イタリア 中国 |
赤御影石 | ニューインペリアルレッド カパオボニート バルモラルレッド | インド ブラジル フィンランド |
黒御影石 | インパラブラック 山西黒 ジンバブエブラック | 南アフリカ 中国 ジンバブエ |
片麻岩 | マルチカラーレッド パラダイス | インド インド |
ラビクル岩 | ブルーパール エメラルドパール | ノルウェー ノルウェー |
閃長岩 | セントモンチーク | ポルトガル |
なお、黒御影は花崗岩とは異なり、石英が少ない、または含まれていない特徴があるため、岩石学的には閃緑岩(せんりょくがん)に分類されます。
しかし、建築石材としては黒御影と称されるため、御影石の石種のひとつとして紹介しました。
また、一般的に、「その他」に分類される片麻岩やラビクル岩、閃長岩も建築石材において御影石と称しています。
御影石の分類ごとの色味
次に、御影石の分類ごとにおける色味を特徴とともに紹介します。
① :白系の御影石
②:ピンク、紫系の御影石
③:赤系の御影石
④:黒系の御影石
⑤:グレー系の御影石
⑥:ベージュ、イエロー系の御影石
⑦:茶系の御影石
⑧:緑系の御影石
⑨:青系の御影石
⑩:マルチカラー系の御影石
詳しく見ていきましょう。
①:白系の御影石
石種名 | ルナパール |
原産地 | イタリア |
ルナパールが産出されるイタリアは大理石の産地としてよく知られています。昔から親しまれている石種であり、白御影の代表格です。
②:ピンク、紫系の御影石
石種名 | ピンクポリーノ |
原産地 | スペイン |
桜御影の代表的な石種には、ピンクポリーノが挙げられます。薄いピンクをベースにグレーや黒の模様が入った石種です。安定的に採掘できるため、大型建築物に需要があります。
③:赤系の御影石
石種名 | カパオボニート |
原産地 | ブラジル |
カパオボニートは、ブラジルを原産地とする赤御影の代表的な石種です。オレンジがかった赤地に黒の雲母模様があるのが特徴的です。同じ赤御影石のニューインペリアルレッドと比較するとオレンジ味があります。
④:黒系の御影石
石種名 | ジンバブエブラック |
原産地 | ジンバブエ |
地質学上では火成岩になりますが、建築業界では黒御影として使われている石種です。模様はほとんどなく、ほぼ黒一色で石目が小さいのが特徴です。
黒御影の中では世界中で最も多く生産されています。耐久性に優れており、吸水率が低く、建築物だけでなく家具にも使用されるケースもあります。
⑤:グレー系の御影石
石種名 | 浪花白(ナミハナシロ) |
原産地 | 中国 |
模様が波のように見えるため、浪花白と名付けられた御影石です。名前のとおり分類は白御影石ですが、実際はグレーに見えます。
浪花白は原石の切り出し方によって、異なる模様が現れるのが特徴です。縦方向に切ると波のような美しい模様が現れる柾目(まさめ)と、水平に切り出すと異なる模様が現れる平目(ひらめ)があります。含有鉱物の影響でサビが出るのも特徴のひとつです。
⑥:ベージュ、イエロー系の御影石
石種名 | ジアロベネチアーノ |
原産地 | ブラジル |
ジアロベネチアーノは、ブラジル産の黄色系の御影石です。外観は赤や黒い結晶が入っていたり、黒い部分が筋のように入っていたりします。
比較的結晶が大きめで見栄えはするものの、強度が若干落ちるのがジアロベネチアーノの特徴です。吸水率もやや高く、少し脆い性質もあります。
⑦:茶系の御影石
石種名 | バルチックブラウン |
原産地 | フィンランド |
茶系の御影石の中ではスタンダードな色味の御影石です。濃いめの茶色地に大きな玉柄の外観を持ちます。農淡によってグレードが異なり、地色の濃いタイプが価格も高く、生産量も安定しています。
⑧:緑系の御影石
石種名 | ベルデホンテン(グリーン) |
原産地 | 南アフリカ |
数少ない緑系の御影石において、ベルデホンテン(グリーン)は代表格の石種です。外観は黒っぽいベースに、深い緑と白い色があります。石目は大きく、白い斑が特徴です。若干の吸水性があるものの、耐久性に優れ、摩耗にも強い特性があります。
⑨:青系の御影石
石種名 | ブルーパール |
原産地 | ノルウェー |
ノルウェー産のブルーパールは、御影石では珍しい化石の入った石です。青味のある石の中にパール結晶と呼ばれる長石があり、中には貝殻の化石が含まれています。
長石は光を反射してキラキラ光るのが特徴です。輝きが多く入り、色がダークな石ほど高価で取引されています。しかし、石目が大きく、キズが入りやすいのはブルーパールの難点です。
⑩:マルチカラー系の御影石
石種名 | パラダイス |
原産地 | インド |
インド産のパラダイスは、マルチカラーと呼ばれるようにさまざまな色が絡み合い、流れるような模様を持つ御影石です。マルチカラーと呼ばれるとおり、外観は茶系にピンク、紫と多様な色彩を持っています。
模様もさまざまであるため、柄の入り方で色の感じも変化する石種です。石目が小さく、吸水性も低い特性を持ちます。
御影石を扱う際の注意点
御影石は耐久性に優れており、外装をはじめ、さまざまな用途で使われます。
しかし、取り扱い時の注意点も多くあるため、使用を検討している場合は事前にチェックしておきましょう。注意点は以下のとおりです。
- 天然石ゆえに色調や模様にバラツキが生じる
- 吸水性があり、汚れの付着やシミにつながりやすい
- 湿潤場所や凍結の恐れがある場合には使用できない石種がある
- 酸に弱い石種がある
なお、以下の石種は酸に弱いため、メンテナンス時に酸洗いや酸性洗剤の使用は控えましょう。
- セントモンチーク
- ブルーパール
- インパラブラック
また、施工時には全体のバランスを考慮し、配置を検討するのも重要です。御影石の注意点を把握し、導入するかどうかを見極めましょう。
御影石の仕上げの種類
御影石の仕上げの種類は、以下の6つが挙げられます。
①:本磨き仕上げ
②:水磨き仕上げ
③:ジェットバーナー仕上げ
④:ビシャン仕上げ
⑤:サンドブラスト仕上げ
⑥:ハツリ仕上げ・こぶだし仕上げ
順番に紹介します。
①:本磨き仕上げ
本磨き仕上げでは、まず切削した石材表面を粗い砥石から荒磨きが必要です。
次に、中程度の細かい砥石で中磨きを行い、最後に細かな砥石で本磨きをします。粗い砥石から徐々にきめ細かい砥石に替えて研磨し、光沢のある状態にする方法を本磨き仕上げといいます。
②:水磨き仕上げ
水磨き仕上げとは、本磨きの手前で砥石の番手を#400や#800までにして研磨する方法です。本磨きより粗い砥石を使うため、水磨き仕上げでは色調が柔らかくなります。
③:ジェットバーナー仕上げ
ジェットバーナー仕上げとは、御影石の機械挽きした石材表面を1800〜2000℃ほどのバーナで熱して仕上げていく方法です。
石材結晶の熱膨張率の違いを利用し、表面を弾き飛ばして凹凸をつくります。滑り止め効果や、自然な岩肌に近い仕上がりが特徴です。
④:ビシャン仕上げ
「ビシャン」というピラミッド状の刃が郡状になっている特殊なカナヅチで石を叩き、表面に凸凹をつける方法がビシャン仕上げです。ジェットバーナー仕上げと比較すると、凹凸が少ない表面になります。
ビシャン仕上げをすると防滑性が出るため、内装から外装まで幅広く活用したい場合に採用される方法です。
⑤:サンドブラスト仕上げ
サンドブラスト仕上げは、ショットブラスト仕上げともいわれ、石材表面に鉄砂といわれるカーボン性の砂を吹きつけ、表面に凸凹をつくる方法です。
ジェットバーナー仕上げより凹凸が少なくなります。ゴム板を貼り付け、模様や文字を彫る際にも使用される方法です。
⑥:ハツリ仕上げ・こぶだし仕上げ
ハツリ仕上げとは、石の自然な割れ目に鏨(たがね)で深くはつることで、表面の凸凹を大きくする仕上げ方法です。
また、石の表面を意図的に加工して中央が盛り上がるようにする仕上げは”こぶだし仕上げ”と呼ばれ、御影石によく使われています。
御影石とはさまざまな用途で使用される石材!イメージに合うものを選ぼう
御影石は耐久性やメンテナンス性に優れており、外壁をはじめ、玄関床や浴室などさまざまな用途で使用される石材です。また、色調も豊富であることから、建築物のイメージに適しているものを選択できるでしょう。
一方で、石種によって扱う際に気をつけるべき点が異なります。価格も決して安価ではないので、導入にあたっては慎重に検討することが大切です。
タイル専門店のタイルライフでは、御影石をはじめ、多種多様な石材やタイルを取り扱っています。商品数は25,000点以上あり、業界最大級の品揃えです。色味やサイズ、原産地などの検索条件を指定すれば、好みにぴったりの石材に出会えるでしょう。
御影石選びでお困りの方は、ぜひ以下よりチェックしてみてください。